モリブデンは高融点・高強度の高融点金属であり、鉄鋼産業と高温潤滑の双方に不可欠な添加元素である。最大の用途は合金鋼であり、微量のモリブデン添加が焼入れ性、高温強度、焼戻し脆化耐性を大幅に改善するため、構造用鋼、工具鋼、ステンレス鋼、超合金のすべてがモリブデンを含み、石油・ガスパイプライン、圧力容器、自動車の歯車、軍用装甲に広く使われる。超合金では、ガスタービンや熱間押出しダイスに用いられ、赤熱状態でも硬さを保つ。潤滑では、二硫化モリブデン(MoS2)の層状構造が優れた固体潤滑添加剤となり、グリースに配合されたり、乾燥被膜としてスプレーされたり、粉末冶金による軸受や歯車用固体潤滑剤として、高温・高荷重・真空下で使われる。触媒では、モリブデンコバルト触媒やモリブデンニッケル触媒が石油の水素化脱硫や重質油のアップグレーディングに使われ、精製産業の重要な助剤である。モリブデン線や板は、高温での蒸気圧の低さとガラス濡れしにくい性質から、ガラス溶解電極や真空加熱エレメントにも用いられる。
二硫化モリブデン(MoS2)は黒色鱗片状の粉末で、天然モリブデン鉱の主成分である。層同士が容易に滑るため優れた固体潤滑剤となり、高温グリース、乾式被膜、ナイロンなどプラスチックの自己潤滑改質に使われる。三酸化モリブデン(MoO3)は金属モリブデンやモリブデン酸塩を作る中間酸化物であり、脱水素・脱硫触媒の成分や、陶磁器・釉薬の着色剤でもある。モリブデン酸塩(モリブデン酸ナトリウムやモリブデン酸アンモニウムなど)は金属腐食抑制剤、冷却水系のスケール防止剤、微量農業肥料として広く使われ、石油の水素化脱硫触媒を調製する前駆体でもある。モリブデン鉱(MoS2)自体がモリブデン精錬の主鉱石であり、潤滑剤としての顔と冶金原料としての顔が同一鉱物の中で一致している。