アンチモンは金属と非金属の中間的な性質をもつ半金属で、密度 6.697 g/cm³、融点 631 °C である。もろく銀白色で、それ自体を構造材料にはできないが、難燃性、電池、活字合金の分野で代替できないニッチを占めている。最大の用途は難燃助剤としてで、ハロゲン系難燃剤と組み合わせてプラスチック、ゴム、塗料に加えられる。Sb2O3 自体は燃えないが、高温でハロゲンと反応してラジカルを捕捉する酸化アンチモンを放出し、ポリマーの着火を遅らせるため、電線・ケーブルの外被、家電の筐体、家具、繊維に遍在している。鉛蓄電池では、少量のアンチモンを加えると格子が硬化し、鋳造性が向上し、ガス発生が抑えられるため、始動用や予備電源用の電池がよりサイクルに強くなる。印刷と軸受では、アンチモンが凝固時にわずかに膨張する性質が重要である。スズ・鉛・アンチモンの活字合金は鋭く明瞭な字形を鋳造でき、活版印刷の中核だった。アンチモンを含むスズ基バビット合金は主軸受や連接棒軸受として使われる。アンチモンはまた、軍用の起爆装置、煙火の発色剤、ガラスの清澄剤にも現れる。
三酸化二アンチモン(Sb2O3)はアンチモン白として知られる最も重要な化合物で、白色結晶粉末である。それ自体の難燃性は限定的だが、プラスチックや繊維中のハロゲン系難燃剤と強い相乗効果を示し、ケーブル、テレビ筐体、玩具、ポリウレタンフォームにおける主力の難燃体系となっている。三硫化二アンチモン(Sb2S3)は輝安鉱で、製錬の主要鉱石である。摩擦発火性のため歴史的にはマッチの頭や軍用の起爆薬組成物に使われ、現在は黒色ガラスや赤外窓にも用いられる。三塩化アンチモン(SbCl3)はかつてアンチモンバターと呼ばれ、金めっきの古色仕上げや催吐剤に使われたが、現在は主に有機合成における塩素化触媒として用いられる。アンチモン化インジウム(InSb)とアンチモン化ガリウム(GaSb)は、赤外検出器、ホールセンサー、テラヘルツデバイスに使われる重要な半導体である。五酸化二アンチモン(Sb2O5)は難燃剤およびポリエステル重合触媒として使われる。